スッポン通信 vol.11

スッポン通信 vol.11

ジョナサン・グレイザー監督の「関心領域」を観てきました。
タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にある〝アウシュビッツ強制収容所群〟を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉で、映画の中では、強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長と、その家族の暮らしを描いています。
ある意味、退屈で異様で恐ろしい映画です。でもその退屈さと異様さと恐ろしさを、ぜひ観てほしい。

所長家族の平和な暮らし、花いっぱいの花壇、プールで遊ぶ子供たちの笑い声、度々行われるホームパーティー、しかしそこには壁があり、その向こうはアウシュビッツ強制収容所なのです。そこでは常にユダヤ人を焼却しているであろう煙があがっているし、時おり銃声や悲鳴や叫び声が聞こえているのです。でも誰もそこには関心を持っていないし、異様さも感じていない。ただ一番下の子供、まだ赤ん坊である子供だけが何かを感じているのだろうか、ずっと泣いているのです。
ここではアウシュビッツの悲惨な状況は直接語られることははありません。それだけに恐ろしい映画になっています。そしてこの映画は過去の行為を断罪する為の映画ではなく、現在に生きる我々に訴える映画になっています。

何度もいうけど、ぜひ観てみてほしいなぁと。