スッポン通信 vol.7

スッポン通信 vol.7

さて「キャンディ♡キャンディ」です。

もう今回は、芝居と全く関係ありません。
だから劇団員、もしくは演劇関係者は即刻スマートフォン、もしくはタブレット、パソコンの電源を落とす、もしくは投げ捨てて「スッポンのばぁか」と毒づいて欲しい。来週はちゃんとお芝居に関係ある話を書くね。

中学三年の時「キャンディ♡キャンディ」は妹が「なかよし」を購読していたので、それを盗み読んでいた。

すぐに惹かれた。

いがらしゆみこの圧倒的な画力、当時の少女漫画には珍しい海外、しかも20世紀初頭の壮大な物語。
読んだ方は覚えているだろうか?

アンソニーの落馬シーン。

キャンディとアンソニーの恋愛がこれから始まるという時に、王子様的存在であったアンソニーが突然死ぬ。狐狩りの最中に、馬がワナに足をとられ落馬し、命を落とすのだ。
落馬の瞬間、アンソニーの体は正面を向いているのに頭は後頭部しか見えない、とても不自然な恐ろしいカット。その次の頁で、アンソニーはもう死んでいるのだ。

まだ2巻!!!

漫画至上「タッチ」の上杉和也の死亡シーンと並ぶ、衝撃的なシーンだと思う。

と「キャンディ♡キャンディ」が素晴らしい漫画であることは間違いないのだが、私が「キャンディ♡キャンディ」にハマったのは「キャンディ♡キャンディ」を、とても上手く描く女の子を好きになったからだ。
小さくてツインテールで、ぴょんぴょん跳ねる、とても可愛らしい女の子だった。
当時、学校ではクラスを六つぐらいの班に分け、そこで「班ノート」を書かせるというウザイものがあった。そこに私が「キャンディ♡キャンディ」の話題を書くと、彼女はとても上手にキャンディのイラストを班ノートに描いて返しくれるのだ。
私は班ノートに夢中になった。
ある事ない事を班ノートに書き、なんとか彼女の気を引こうとした。文章量も多くなり、内容も濃くなる。他の班員もそれに合わせてくれたので、とても充実した班ノートが出来上がっていった。
しかも班ノートというのは班替えがあればそこでメンバーチェンジするのだが、この班ノートは班替えも無視して、高校一年の夏休みまで続いたのだ。

「キャンディ♡キャンディ」を好きなのが、その娘への恋慕に変わっていった。
ここで、あの娘は今はどうしているんだろう?って書くところなんだが、彼女が今どうしているかを私は知っている。
検索すればwikipediaで出て来るし、なんだったら画像や動画まで出てくる。絵が上手い少女はこの後、アニメーターになり漫画家になって活躍している。
天王寺の場末の酒場で「キャンディ♡キャンディ」を検索しながら酒を飲んでいるスッポンとはえらい違いである。

「キャンディ♡キャンディ」は原作者といがらしゆみこが著作権の問題で揉め、と言うよりいがらしゆみこが判決を無視し暴走し揉めに揉めた。それに嫌気が刺したのか、講談社でも再版、復刊の動きはなく、東映アニメーションもアニメの再放送を行っていない。つまり作品としては抹殺されている。
これは文化的損失である。
政府は「クールジャパン戦略」などと言うのであればこの問題に介入し、著作権やキャラクター使用権を第三者の機関に持たせ、作品の復刊、アニメのリメイクまたは映画化を行い、キャラクタービジネスを解放すべきだ。
私は正規のキャンディの絵と「なきべそなんてサヨナラね」と書かれたTシャツを着て酒を飲みたい。

(今回はとてもシビアなのでキャラクターの画像は出せません)