
メリケンじいさんの昔話 《第一回 酔族館の爪痕②》
11畳に30人、決して不可能な数ではない。
1人1/3畳、ふむふむ。膝を抱えた体育座り、大きな荷物は預かろう。
次々とプロジェクトの骨格が出来上がってくる。狭い空間に満員の客、演者との一体感。
「ええぞコレは!」
ココで難問が立ちはだかる、30人って誰が決めるの?
そうだ、宣伝すれば客は来る、でも30人とは限らない。
チケットの前売りで客の総数は予想出来ても、5人の回もあれば50人の回もあるかもしれない。
だめだ、50人来たら死人が出る…
こうして〝酔族館30人劇場〟は、関西小劇場界初の(たぶん)完全予約制の劇場となった。
難問はまだまだあった。花道がない、舞台袖がない。
夜を徹して議論を重ね(稽古場で酒飲んで夜遅くまで喋ってたの意味)ある結論に至った。
稽古場の内側をすべて単管(鉄パイプ)で囲うのだ。コレで暗幕を張る事も出来る。照明だって釣り放題。
役者の入退場は客席上に雲梯(うんてい)状の短い単管を取りつけ、雲梯を伝って客の頭上を通って入退場する…
画期的。
またしても関西小劇場界初の(たぶん)雲梯式入退場システムが完成した。
やはりこの時代、劇団酔族館は関西小劇場界に、確かに爪痕を残していたのだ。


