酔族館回想録 其之三

酔族館回想録 其之三

『MOGURA』は後にも先にも、私(森のめぐみ)が劇団酔族館で主役を演じた唯一の芝居である。
そんな『MOGURA』の稽古時の思い出話。

当時、結婚だか出産だかのお祝い事を控えていたスッポン太郎さんに、ご祝儀を劇団員から集めて渡す事になる。
何故か管理を任された私は、劇団員から数千円ずつ集めて4万円程になったお金をご祝儀袋に入れ、そのご祝儀袋を台本と一緒にファイルケースに入れ、当時の稽古場があった駒川中野に向かうバスに…
あろう事か置き忘れてしまったのだ!
バスを降りてすぐに気付いたが遅かった。
バスは行った後で「どうしよう…4万円弁償しないと…」と意気消沈しながら稽古場に行き、私のシーンを稽古するも身が入らない。
スッポンさんや他の劇団員に理由を聞かれ「4万円と台本をバスに置き忘れた」と伝えると、心配してくれる劇団員。
ダメ元で市営バスに電話をすると…
なんと終点停留所で保管しているとの事!
稽古を抜け取りに行くと、さすが日本!
ご祝儀袋もちゃんと無傷で残っていた!
そのまま稽古場に持ち帰り4万円が無事であった事を伝えると、スッポンさん他が「ヤッタ〜!宴会や宴会や~!」と歓声を上げる。
どうやら「4万円が無事に見つかったらそのお金で宴会をしよう」という話をしていたらしい。
「えっ?スッポンさんがそれでいいんでしたら、それでいいですけど」と、ニヤリと笑いながら、無事戻ってきた祝儀袋を差し出しました。

(筆者:森のめぐみ)

第17回公演
未来世紀天下茶屋『MOGURA』
作/演出:スッポン太郎
1997年11月8日〜9日
扇町ミュージアムスクエア